コロッケ以外の惣菜も店頭に並べていると、背中に視線を感じた。

振り向くと、品の良いグレーのスーツを着た背の高い男性が、足早に自動ドアから出て行く姿が見えた。

夕食時ならいざ知らず、こんな日の高い時間にスーツを着た男性が客として来店するのは珍しい。

思わずその男性を目で追っていると、駐車場に止めてあった黒いフェラーリに乗り込み、走り去って行った。

お金持ちの経営者が庶民の好みを調査しに来たのかしら?

それともライバル店の敵情視察?

隣で椿と同じように、惣菜を品出ししていた幸枝も同じことを思ったらしい。