椿はキッチンへ行き、適当なタオルを見繕うと、氷水につけてぎゅっと絞り、それを龍のおでこにそっと乗せた。
「・・・冷たくて気持ちいい・・・」
「良かった。しばらく安静にしてね。」
「椿さん・・・寒い。」
龍の身体が震えている。
「お布団、ちゃんとかけて。」
椿がそう言って布団をかけ直していると、ふいに龍が椿の手を引っ張り、強く抱きしめた。
その力に引き寄せられ、椿の身体は身動きが出来なくなった。
「ちょ・・・龍さん!」
「椿さんの身体・・・柔らかくて温かい。それにいい匂いがする。」
龍の厚い胸板に椿の頬が密着した。
燃えるような龍の熱が、椿の肌に伝わってくる。
龍の心臓の音がどくん、と聞こえる。
低く少し掠れた龍の声が、椿の鼓膜に響いた。
「・・・こんな風に世話を焼いてもらえるのって・・・嬉しいものだな・・・」
目を閉じたままそうつぶやき、微かに微笑む龍を、椿は切ない思いでみつめた。
龍さん・・・もしかして小さな頃から、熱が出てもひとりで耐えてきたの・・・?
椿は龍の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
胸の鼓動は早くなり、ドキドキが止まらない。
「いつも翔真が羨ましかった・・・椿さんに抱きしめてもらえる翔真が・・・」
龍さんが翔真に焼き餅・・・?
「椿さん・・・・・・椿さん・・・・・・」
龍がうわごとのように、椿の名を何度も呼ぶ。
「大丈夫よ。私はここにいるから・・・」
「ん・・・」
椿を抱きしめる力が徐々に弱くなり、龍は眠りに落ちた。



