ATMから出ると、繁華街のガールズバーの前で、見覚えのある女性が若い男ふたりに絡まれていた。
よく見ると、それは先日椿をオバサン扱いした里見まりあだった。
まりあは男達と押し問答をしている。
「だからあ。ちょっと俺達と飲みに行こうぜって言ってるだけだろ?」
「一緒に楽しもうぜ?な?」
金髪に派手な柄シャツを着たチャラついた男が、まりあの肩を抱こうとした。
その手をまりあは、思い切り振り払う。
「触んな。私、あんた達みたいな男、大っ嫌い!」
もうひとりの鼻ピアスをつけた肥満気味の男が、まりあを罵倒する。
「そんな露出の高い服着て男誘ってるくせに、気取ってんじゃねーよ!このクソビッチ!」
「そのビッチにも相手にされないくせに。ダサい男!」
「なんだと!」
その不穏な空気を眺めながらも、通行人達は我関せずと三人から距離を置いて歩いていく。
椿は思わずまりあのそばに駆け寄り、声を震わせながら、男達に叫んだ。
「い、嫌がってるじゃない!あなた達、この子からすぐに離れなさい!」
突然の椿の出現に、男達はポケットに手を突っ込みながら、顔を突き出した。
「はあ?オバサン、邪魔しないでくれる?」
椿はすかさずスマホを取りだし、画面をタップしたフリをしてさらに叫んだ。
「今、警察に通報したからね!」
「やべ。マジかよ!行くぞ!」
ふたりの男は焦ったようにパッと、その場から立ち去った。



