椿は二人の様子を冷めた目で眺めながら、そっけなく言った。
「龍さん、彼女を部屋へ入れてあげたら?私達、何でもないんだから。さ、翔真、部屋に入りましょ。」
椿は部屋のドアを開け、翔真と中に入り、バタンと強くドアを閉めた。
外からは「椿さん!誤解だ!」という龍の叫び声が聞こえる。
知らない。
私には関係ない。
全部、ってなによ。
適当なことばっかり言って・・・
どうせあなたは、私が翔真の母親だから、大切にしてくれているのよね・・・
椿はしっかりとドアに鍵を掛けた。
洗面所で手に泡石けんを付けて、いつもより強くバシャバシャと手を洗う。
「いいの?龍が呼んでるよ?」
「いいのいいの。龍さんには龍さんのプライベートってものがあるんだから。さ、翔真。手を洗ってらっしゃい。」
椿は翔真にそう呼びかけ、キッチンへ戻るとエコバックから食材を取りだし、冷蔵庫へ入れていった。



