園からの帰り道、椿が翔真の手を繋ごうとしたが、翔真はそれを振り払った。

「翔ちゃん・・・」

「・・・・・・。」

翔真は椿の声にも無言を貫き、ひとりで家に向かって歩いていく。

その後ろ姿を椿はただ追いかけることしか出来なかった。

自宅マンションに着き、部屋に入ると、翔真は子供部屋にある自分のベッドへ潜り込んだ

「翔ちゃん・・・。」

椿が声を掛けると、翔真は布団の中で泣きながら叫んだ。

「僕は悪くない!」

「・・・・・・。」

「ママなんか、大嫌いだ!」

その叫びが椿の心を打ち砕いた。

翔真は何も悪くないのに、ひとり親だからダメなんだと責められたことで、自分に自信が持てなくなり、かすみに何も言い返せなかった。

そんな自分を、椿は許せなかった。

けれど健太の家へ菓子折を持って行き、再び誠心誠意謝らなければならない。

椿は布団の中で泣き続ける翔真に言った。

「翔ちゃん・・・ママ、健太君の家に行ってくるから、お留守番しててね。すぐに帰って来るから・・・絶対に外に出ちゃダメだよ。わかった?」

翔真は何も答えない。

椿は出掛ける支度をすると、部屋を出て、しっかりと鍵を掛けた。