○コテージ

菜摘「わぁ…!花音、湖!」

花音「見れば分かるわよ。菜摘ったらはしゃぎすぎ。でも綺麗ねぇ」


菜摘たちは今、湖があるコテージにいる。天気は快晴。絶好の旅行日和だ。

1週間前に菜摘は西澤にコテージで料理をしてくれないかと頼まれた。最初こそ戸惑ったが、西澤に夏合宿の時の料理の写真を見せられてすぐに承諾した。

○1週間前の菜摘の部屋(回想シーン)

西澤は空になったタッパーを菜摘に渡しに来ていた。2人用のダイニングテーブルに向かい合わせにして座る。

西澤「おかずありがとう。美味しかった」

菜摘「どういたしまして。だいぶ顔色良くなってきたね。あれから体調は大丈夫?」

西澤「すっかり良くなったよ。園田さんの料理のおかげ」

菜摘「私はただ料理を作っただけだよ。また作ったから持っていって」

西澤「ありがとう。あの後さ、病院にも行ったんだ。軽い夏バテだって」

菜摘「夏バテ!?あの時、辛そうだったもんね。でも元気になって良かった!」

菜摘は笑顔で西澤の回復を喜んだ。


西澤「うん。やっぱりちゃんと食べないとダメだって医者からも言われて。作業してて食べることを忘れていた自分を反省したよ」

菜摘「食欲無くても少しだけ食べるだけでだいぶ変わってくるからね。もちろん無理はダメだよ。本当に食べれない時は無理せずゆっくり休んでね」

西澤「ふふっ、園田さん、お母さんみたいだ」

菜摘「わぁぁぁ!また悪い癖出ちゃった…。花音にも家族にも言われて気にしてるのにー…」


顔を真っ赤にして両手で覆い隠す。頭から湯気が見える。

西澤「俺がこうしていられるのも、園田さんのお人好しのおかげだよ。それで相談なんだけど、園田さん」

菜摘「な、何ですか?」

西澤「今度の連休って空いてる?」

菜摘「連休?空いてるけど…」

西澤「もし良かったら一緒にコテージ行かない?」

菜摘「コテージ?」


西澤はコテージに来て欲しい経由を話す。


○コテージ(現在)

菜摘(あの写真を見せられたら、断ることなんて出来なかった。それに初めての遠出。楽しまないと)

片桐「やぁ、園田さん。この度は無理言ってすまなかったね」

菜摘「いえ。お役に立てるなら私、頑張ります!ねっ、花音」

花音「え?あたしは菜摘のボディガードとして来たから料理は食べる専門よ」

菜摘「えぇー!花音も手伝ってよー。花音の好きなフレンチトーストも朝食に作る予定なのに」

怒って頬を膨らませる菜摘。花音は膨らんだ頬を摘んで笑う。

花音「嘘ようそ。菜摘1人に任せるなんてそんな薄情なことしないわ。ふふっ、フレンチトースト楽しみにしてる」

片桐「園田さん、宮原さん。本当にありがとう。何せ俺らが作ったら地獄のような物しか出来なくて…」

久保田「先輩、思い出させないでください。これから美味しい食事が待っているという時に。まじで食欲落ちそう…」


久保田は思い出してグロッキーになっていた。


西澤「片桐さん。準備出来ました」


撮影準備を終えた西澤が片桐たちを呼びに来た。


片桐「お?サンキュー西澤。じゃあ俺たちは撮影始めるかー。美味しい食事のために頑張るぞーお前ら〜」

西澤「はい。園田さん楽しみにしてるね」


片桐と西澤は先に湖へと向かった。久保田は2人が居なくなるとチラチラと菜摘の方を見て何か言いたげの仕草をする。


久保田「あ、あのさー…」

花音「何よ?また菜摘に何か言うつもり?」


花音は菜摘以上に初めて会った時の事を根に持っていた。大切な友達を傷つけられて花音の中で久保田は要注意人物となっていた。


久保田「ちげーよ!その、園田」

菜摘「久保田くん…?」

久保田「この前は悪かった。笑ったりして」

菜摘「あぁ、あの時の。そんな、気にしてないよ。久保田くんたちの為に美味しい食事を作っておくから撮影頑張ってね!」

久保田「お、おう!ありがとな。楽しみにしてる」


久保田の表情は明るくなった。外にいる西澤たちのもとに駆けつける。


菜摘「さぁ、皆のためにはりきって作るぞー!」

花音「菜摘ってお人好しね。まぁ、そこが可愛いポイントでもあるけど。レシピ見せて。下処理はあたしに任せて!」

菜摘「ありがとう花音。じゃあ、まずは…」


○コテージ(外)


西澤たちは湖をバックに撮影を始める。片桐が中心となって素材をひたすら撮り続ける。


片桐「次はボートに乗ってむこう岸から撮るぞ。機材濡れないようにビニール掛けとけ。西澤は小型カメラでボートでの様子を撮ってくれ」

西澤「はい」


片桐「西澤、今回は助かったわ」

西澤「何がですか?」

片桐「ご飯作り人を連れて来てくれて。園田さんとは部屋が隣通しなんだっけ?」

久保田「羨ましいな〜おい。俺もそんな偶然に出会ってみてー」

片桐「久保田の意見に同感。あんなに可愛い子が隣とか西澤お前やるなー」


片桐は肘で西澤にちょっかいを出す。それに動じずに西澤は淡々と準備を進める。