そして、わたしはバス停へ向かうとバスに乗り、一番後ろの広い後部座席の窓側に座ると、社用スマホで今入っている予約を確認した。

すると、次の週に"五十嵐悠人"という名前で予約が入っており、わたしは"あれ?"と思った。

確か昨日の夜、"彼女のフリをして欲しい"と指名してもらい会った人の名前も"五十嵐悠人"じゃなかったっけ?

そういえば、帰り際にまた会ってもらえますか?とか何とか言ってたよね。

早速、予約入れてくれたんだ。

そんなことを思いながら、わたしは12時待ち合わせの北島さんあとランチをし、その後は15時から17時、18時から20時の仕事を終わらせ、18時閉店で仕事が終わっているはずの直生に電話をかけた。

「もしもし?」
「もしもし〜、終わったよぉ。」

疲れ切ったわたしの声に苦笑する直生は、わたしが居る場所を訊くと「すぐ行く。」と言い、それから急いで来てくれたのか15分後には迎えに来てくれた。

直生の車に乗ったわたしは溜め息を一つつくと「疲れたぁ、、、」と言葉を漏らした。

「お疲れさん。今日もハードだったな。」
「今日はさすがにねぇ。」
「売れっ子は大変だ。」
「あ、そういえばね、来週また昨日と同じ人から予約入ってたの。」
「昨日?」
「ほら、彼女のフリして欲しいって言ってた人。」
「あぁ。また彼女のフリか?」
「ううん、それが次回は普通にデートみたい。」
「マジで?彼女のフリが、気に入られちゃったってこと?」

直生が心配そうな口調でそう言い、わたしは「帰り際に"また会ってくれますか?"みたいなこと言われたんだよね。」と言った。

「何か、その人危ないなぁ。」
「でも女慣れしてなさそうな、草食系男子って感じだったよ?」
「女慣れしてないからこそ、ちょっとしたことで本気にされる場合があるから、ちょっと気を付けた方がいいぞ。」

直生はそう言って心配してくれたが、この時のわたしは「そうなのかなぁ?」とそれほど深く考えてはいなかった。