ある時期、よくみていた夢がある。

夢の中のわたしは、今現在のわたしの姿ではなく、綺麗な着物を着ていた。

そして、歴史の教科書に出てきそうなお侍さんみたいな男性に手を引かれ、必死に走っている。

それから辿り着いたのは、覗けば震え上がる程に高い崖っぷち。
しかし、夢の中のわたしは何も怖くはなかった。

わたしの手を引き、ここまで連れて来た彼は、どうやらわたしの恋人のようだ。

彼は周りを見回し、鋭い石の破片を見つけると、自分の手首に傷をつけ、そしてその石をわたしに渡す。

わたしも彼と同じように自分の手首に傷をつけ、それからわたしは彼と微笑みあった。

「これがお互いを見つける目印だ。来世では、幸せになろうな。」

彼の言葉にわたしは涙を浮かべ頷く。

そして、わたしたちは強く抱き締め合いながら、その崖から真っ逆さまに落ちていった―――···