その理由――
「天使と共に逃亡中。重罪人につき、見つけ次第捕縛、あるいは殺処分可」
「レイ、こっちよ」
振り返れば、森の影から手を差し伸べていた少女。
銀の髪、淡く光る瞳。背中からは、羽が見えていた。片翼しかない――最初からそうだったのだ。
「エリス……!」
エリス・ロヘンド。彼女こそが逃亡中の天使であった。
レイヴンはエリスの手を取り走った。
誰も知らない2人だけの秘密の小道を。
「どうして俺なんだ? お前、天使なんだろ? もっと偉い誰かを頼れば……」
「だめ。私は人間を、あなたを……“好き”になってしまったから」
天使と人間。
本来、交わってはならぬ存在。
天使は“高貴たる存在”として王政に仕え、崇められていた。人々は彼らを恐れ敬い、その力を利用した。だが、天使が人間を愛することは、神への背信――【死罪】とされた。
エリスは、王の命令に背き、捕虜となっていたレイヴンを助けた。
そして逃げた。それがすべての始まりだった。


