「今日は二回も目合っちゃった♡
 これで午後の手術も頑張れるなぁ」

「牧先生…」

「んー?」


頬が緩みに緩んだ牧を、
渚は再び白い目で見た。


「いい年して目が合っただけで
 尻尾を振っているようじゃ、
 一生そのまま、ですよ」

「グハッ‼」


止めの一撃だった。

牧は壁に背を預け、よろよろと項垂れた。


「ま、せいぜい頑張ってくださーい」


致命傷を受けた牧を置いて、
渚は手を振って歩いていった。

足音が聞こえなくなったところで、
俯いたままクスッと口角が上がる。


「…甘いんだよなぁ、小娘め」


不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。

京子が立っていたその場所に、
牧は熱い視線を向けた。