さすがに同情したのかしていないのか、
渚が僅かな救いの光を見せる。


「それか、それか!
 なんだかんだで、先生のあと一押し待ちなのか」

「押しって?」

「駆け引き、って言うんですか?
 アメリカについていったってことは、
 少なからず先生は先輩にとっては、
 特別な存在、なんでしょうけどね」

「だ、だよね!?」


牧の表情がパッと輝くと、
渚は再び引いた目で目の前の生き物を見た。


「脈がゼロってわけじゃないよね!?」

「いや、脈はゼロだと思いま…」

「あ!きょんちゃんだー!」


廊下の角を曲がってきた京子に、
牧は再び大きく腕を振る。

京子の目当ては当然、牧ではなく渚だった。


「そんなの相手してないで、
 もう先生たち手洗い行ったよー」

「やば!すぐ行きまーす」


渚が返事をすると、京子はまた自分たちの
手術部屋に戻っていった。