「はい?」

傘を忘れた事をなんで僕に言うんだよ。

「だからー。最寄りの駅、一緒でしょ?そこまで傘、入れてよ。」

良いでしょー?と首を傾げると、黒髪の間から銀色のリングピアスが覗く。僕とは次元が違う人だ。

「なんで僕なんですか。他にいっぱいいるでしょ。
友達とか。」

絶対こいつ、僕に何かしようとしてるんだ。そうじゃないとこんな僕に話しかけてきたりしない。

「君が良いんだよ。ほら行こ。」

半ば強引に外に連れ出される。

「ちょっ、僕は良いだなんて…。」

「駅までだからさぁー。」

こいつ、なんて呑気なんだ!さっきよりも雨が強くなってきた。

アイツはというと、今僕の傘の下で鼻歌を歌って歩いている。

本当に駅までなんだろうか。実は家まで着いてくるんじゃ…。

「ねぇ、俺一ノ瀬結っていうんだけど、お前は?」

もう名前を聞いてきがった。

「橘真翔です。」

「へぇー、真翔君かぁー。」

へ、へぇー…。反応うっす。なんで聞いたんだよ。

駅までまだ距離はある。