For Myself

私の額に触れるそんな感触で目を覚ました。それはお母さんの手で、とても久しぶりな気がする。



「渚。今まで気づけなくてごめんね。」



お母さんのごめんねが聞きたいわけじゃない。



「もう遅いし、澪が待ってるから帰るけど、入院道具一式は持ってきたから大人しくしておくのよ。」



そうだよね。澪が待ってるから私の傍には居れない。お母さんの温もりが離れて、部屋から出ていってから涙が流れていることに気がついた。



「病棟に上がるが…大丈夫か?ほら。」



先生が体を支えベッドに座らせてくれて、さらにティッシュを差し出してくれる。優しくされたらもっと泣いちゃうよ。止まらない涙に少しの間付き合ってくれた。



涙を流していて途中で息が苦しくなり咳き込んでしまう。ああ、こんなに情けない姿誰にも見せたくないのに。



いつも夜に出始める咳、所々窓の隙間風のような音が入るそんな咳に嫌気がさす。



「これは喘息の発作だ。今までもこういうことがあったか?」



これが喘息なんだ。声に出さずに頷く。



「これは喘息に効く薬、ここを押したら薬剤が出てくる。ここを咥えて、俺が押すのと同時に息を吸って欲しい。その後3~5秒ほど息を止めてね。



123で押すから。行くよ、1.2.3」



カシュッっと薬が入るのと同時に吸い込むことが出来た。3~5秒の息を止める時間はとても長く感じる。終わったらよく出来たなと声掛けられた。



「吸入という方法の薬だ。普段から発作を起こさないために使うものと、発作が起きてから使うものの2種類を渡す。どちらも、吸入をしたら必ずうがいをすること。」



吸入をして、咳がある程度止まってきた。呼吸がしやすくなるのを実感する。薬って凄い。洗面台でうがいをしてから入院病室に向かうことになった。