For Myself

それから先生は何も私に言わなかった。静かな時間が過ぎてただ、私の気持ちが落ち着くのを待ってくれていたのだと思う。



そんな無言の空気を変えたのは看護師さんの声だった。



「立石さんのお母さんお見えになりました!ここに案内しちゃって大丈夫ですか?」



ちらりと私の方を見た先生が、通して下さいと伝えた。



私もずっと寝たままだったし、ベッドに座ろうと思い起き上がろうとした。でも、頭をあげた瞬間視界が暗くなり元の体制に戻ってしまった。



今までできていたことができなくなっていることに驚いた。その様子を見ていた先生が近づいて、パパッと脈を測ったり、目の下を確認したりしている。



「寝たままは嫌か?まだ、貧血はあるから寝たままでお願いしたいんだが。」



そういう訳ではない。でも、お母さんに寝てる姿は見られたくなかった。



「お母さんがなんて思うかなって。」



思ったことが、スッと出たことに自分自身でも驚く。



「大丈夫だ。ここは病院だ、君も体調が悪いからここにいる。気にしなくていい。誰でも体調は崩し、病気にもなる。気を張りすぎるな。」



ああそうなのか。無理をしなくてもいいんだ。と初めて気がついた。