For Myself

養護教諭の後ろに続いて入ると、ジャージを着ているからそこまで体型は分からないものの顔色などが酷く悪いことは分かる。



低栄養だろうなということはわかった。身長も160cmちょっとはあるだろうし、それであの体重となるとかなりやばい。何故誰も病院を受診させなかったのかと疑問に思う程度。



「この子が…そうですねちょっと見るからに、このままは難しいです。



このまま病院に連れていくことはできますか?



その前に少し見させてもらいたいんですけど、知らない僕からよりも、養護教諭の先生からの方が話しやすいと思うんでお願いします。」



と当人を除いて話してしまう。



「立石さん、突然別室に連れてきてしまってごめんなさいね。立石さんね去年から体重がかなり減っちゃってるんだ。自覚はあるよね?」



少しの沈黙の後に立石さんは話し始めた。



「自覚というか、友達から痩せたって言われることが多くなりました。でも、他にそんなこと言ってくる人いなかったし…お世辞くらいにしか捉えてなくて…」



「はぁ?」



気づいたら声が出ていた。その声に驚いたのか生徒の方がビクッっと上がる。



全くの自覚なし。摂食障害だったらダイエットについての話題が上がるだろうけどそれすらもない。自分の状態の自覚ができないのはかなり深刻である。



「とりあえず、健診しちゃいましょう。」



という高森の声で検査を始める。 養護教諭も看護師だ。サポートに回ってくれるのはありがたい。



「すみません。この子の服あげてもらっていいですか?」



他の子ども達には服の上から聴診するが、虐待の可能性も捨てきれないため体の様子を見るために服をあげてもらった。視線は今まで一度も合っていない。



聴診をして、俺の見立てだと低体重、低栄養によって徐脈となり、血液循環が上手くいってない。さらに、喘鳴が聞こえている。喘息か何かしらの影響で気管支が収縮してしまっているのだろうが、今までそのようなことがあったという情報はない。



「目の下も失礼するよ。高森先生はどう思う?」



目の下を見ると真っ白で重度の貧血も疑われる。高森の意見も一応聞こうと思い交代した。



「喘鳴が聞こえますね。立石さん、今まで喘息とかそういう基礎疾患は持ってない?あと、今苦しいとか最近変わったこととかあったら教えて欲しいなぁ。」



高森の発言への返答も時間がかかった。多分、他の事を考えているのがわかった。



「喘息とか持ってないです。そういう基礎疾患も何も聞いたことありません。」


「じゃあ、質問の続き、今の君の状態は?」


「ちょっと食事量が減っていて、疲れやすくなったかもです。息苦しさとかそういうのは感じてないですが…」



ですがで止まった発言、これを聞かないと後々困る気がして待たずに聞いてしまう。



「ですが、なんだ。」



「立ったりする時、立ちくらみや目眩があったりする時があります。」



貧血症状があるのは診察で十分に予測できていた。