「うんまっ! このおみそ汁、うんまっ!」
謎の大きなオブジェに囲まれて、俺たちはいっしょにおみそ汁を食べた。
テーブルの上には黒いデスクトップパソコンがあって、アニメの女の子のキャラクターの画像がスクリーンセイバー代わりに映し出されていた。
彼は、俺と同い年の26歳だ。
さらさらで前髪の長い茶髪、同じ色のどんぐりまなこ。丸い鼻と輪郭、浅黒い肌を持ち、
上背は俺ほどはないが体格の良いからだをしている。青いスポーツウェアがよく似合っている。
自分で料理をあまりしないので、俺が何か作って持っていくとおおげさなほどに喜んでくれる。

「今度はちゃんとかつお節でだしを取りたいな」
「それって何かすげぇの?」
「うん。もっとおいしいおみそ汁ができるよ」
「すっげ! 今度作って!」

彼が茶色のタレ目をキラキラさせて俺を見る。
こいつのすごいところは、相手の良さを見つけて、
それを褒める言葉をすぐに口にできるところだ。
こいつと会うと自己肯定感が増す。生きていて良いんだ、と思う。
たとえ、世界が悲しいニュースであふれていたとしても。

「そう言えばさ」
みそ汁をあっと言う間にぺろりとたいらげた彼が2杯目をよそいながら俺を見る。
「知ってる?
大家さんちでさ、子猫生まれたよ」