真夜中のおくりもの - お夜食お届けします - 【短編集】

星ひとつない夜だった。空気がキリリと冷たく、俺の頬の産毛をぶわっと逆立てる。
真夜中の12時を過ぎているのに、道路を時折車やバイクが走っていくし、明かりのついている家がある。
勉強や仕事でこんな遅くまでがんばっているひとがいるんだろうな。もしくは、夜でないと起きていられないとか。
- きみって、何も考えてないよね。

ひとにはそれぞれ事情があるのだから、それを尊重して生きるべきだ と俺は思う。
人間なんて、誰かに迷惑をかけて生きる生き物だし、迷惑をかけ、かけられ、ごめんねとありがとうを繰り返して、
みんなでやさしい世界を作っていけないものだろうか。

そんなことを考えながら深夜の住宅街を走り出す。
まるで冷えたサイダーのような風を切っていると、
いやなことをとりあえず忘れられる。

ダンサーって、10年後、続けていられるかわからない職業だと思う。
もし、その10年のうちに大きな故障などをしなければ10年後も俺はダンサーでいるだろうが、
それも運のうちだ、と思う。
ダンサーでなくなっても、俺には歌も絵もあるし、夢もある。
(故郷の沖縄で絵とダンスのイベントを開きたい)

人間なんて、明日のこともわからない生き物だしな。後悔はしたくない。