ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

*

ミザールは静かに、言葉を奪っていった。

「君の声は、僕のためにあるんです。誰かに言葉を渡す必要はない。全部、僕だけのものだから」

ノートに書かれた彼女の記憶と願いが、一頁ずつ破かれていく。

「これで……君にはもう、何も語れないね」

ルカは震えながら、彼の腕を取った。

「言葉は、誰かのためじゃない。私のためにあるの」

彼は最後の一頁を、彼女の喉元に当てるようにして差し出した。

「……じゃあ、君の言葉で、僕を殺してくれたらいい」

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メグレズは幻想を囁き続けた。

「ねぇ……君、前世でも僕と一緒だったんだよ。忘れてしまっただけ。思い出してよ。ね? 一緒にいよう?」

彼は夢の中のルカを抱きしめ、今のルカを無視し続けた。

「君が僕を拒んだら……それって、存在否定だよ?僕は消えてしまうよ」

ルカは、彼の幻想の頬を撫で、囁く。

「なら、消えて。今の私の世界に、あなたはいない」

メグレズは虚ろな笑みで、光を渡した。

「……君はやっぱり優しくない」

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最後に残ったのはフェクダ。彼はずっと見ていた。

手帳を開き、無表情で言う。

「君は、そろそろ泣くと思ってた」
「でも、泣かないね。……じゃあ、このゲーム、終わりかな」

彼の指先が、自分の脳の側面に触れる。

そのまま指を差し込んで、ルカに“時間”を刻む小さな光を差し出した。

「僕が持ってた“記録”を全部壊しても、君の未来は戻らないよ?」
「それでも……君は進む?」

ルカは黙って、光を受け取った。

*

こうして、彼女はすべてを取り戻した。

血と涙と呪いにまみれた、己の“心”を。

彼らは泣き叫んだ。けれど、それは愛ではなかった。ただの渇望であり、飢えであり、執着の結晶だった。

ルカは振り返らない。

今やっと、自分が自分であると感じられるのだから。

――星に還るために。星である前に、人で在るために。