Grey Amber


「え、医学研究をなさってるんですか?」
「うん、まぁ。」
「凄いですね。」
「そんなことないですよ。」

弦巻さんはそう言うと、ソファーから立ち上がり「今日の夜は肌寒いですね。何か温かいものでも飲みましょうか。ココアとホットミルク、どちらにしますか?」と言った。

「じゃあ、、、ココアで。」
「ココアですね、了解しました。」
「何か、至れり尽くせりで、、、申し訳ないです。」

わたしがそう言うと、弦巻さんはキッチンでケトルに水を入れながら「そんなこと気にしないでください。身体が痛かったり、倦怠感があると、ちょっと動くのも大変ですからね。」と言ってくれた。

弦巻さんが言ってくれたことは本当にその通りで、さすが医学を研究している方の言葉だなぁと思った。

それでも今まで"医師"と呼ばれる人たちに「仮病じゃないの?」とか「気の持ちようだよ。」とか、理解をしてもらえずにきている為、弦巻さんの言葉はわたしにとっては貴重な言葉なのだ。

ケトルでお湯を沸かせると、マグカップを二つだし、弦巻さんはココアの粉を入れ、お湯を注いでいく。

すると、ココアの甘い良い香りがしてきた。

「はい、どうぞ。」

そう言い、わたしの目の前のテーブルにココア入りのマグカップを置く。

「ありがとうございます。」
「熱いから気を付けてください。」
「はい。」

そしてわたしは、そっとマグカップを両手で包み持つと、熱そうなココアに息を吹きかけ、火傷に気を付けながらココアを一口飲んだ。

「はぁ、、、美味しい。ココア久しぶりに飲みました。」

わたしがそう言うと、弦巻さんは微笑み、自分もココアをそっと啜ると、マグカップをテーブルに置き、それから「実は、さっきの話しを聞いて、美桜さんに話したいことがあるんですが、」と言い出したい。