わたしは痛みと痺れで不自由な身体で何とか起き上がり、車椅子に乗り換えると、そのままお会計をし、それから玄関まで車椅子で行くと、そこからは歩いて帰る羽目になった。
「今日は、助けて頂いてありがとうございました。」
わたしは玄関前で病院まで付き添って来てくれた男性にお礼を言った。
「いえ、俺は救急車を呼んだだけなんで、、、。でも、その身体で帰れますか?歩くの大変ですよね?」
「大丈夫です。いつものことなんで、、、。痛みが出ても、いつも"異常なし"と言われて、、、もう疲れちゃいました。最期に、優しい方に出会えて良かったです。ありがとうございました。それじゃあ。」
わたしはそう言うと、その男性に一礼をし、力が入らない右半身を引きずって歩き出した。
もう涙も出なかった。
頭にあるのは"死"という言葉だけ。
わたしはもう日が沈み、暗くなった夜道をとぼとぼと歩き、いつもの海へと向かった。
何かあるといつも来ていた、この海岸。
わたしの最期は、この場所が相応しい。
そう思った。
わたしはスニーカーを脱ぎ、靴下をスニーカーの中に入れると、真っ暗闇の海に向かって歩き出した。
海の水は身体の芯まで冷えるほど冷たかった。
それでも、わたしは前へと進み続けた。
これでラクになれる。
これで身体の痛みからも、心の痛みからも解放される。
さようなら、世界、、、



