「綺麗ですね。」
わたしの隣に座る弦巻さんが呟く。
わたしは地平線を見つめたまま「いつも、落ち込むようなことがあると、ここに来るんです。でも、今日は違います。道重先生と弦巻さんのおかげで、この景色を心から綺麗だと思いながら眺めることが出来ています。」と言った。
「俺は、何もしていませんよ。」
「いえ、弦巻さんが"線維筋痛症かも"と疑ってくれて、道重先生を紹介してくださったおかげで、こんなに清々しい気持ちになれているんです。本当に弦巻さんには、感謝しています。ありがとうございます。」
わたしはそう言うと、弦巻さんの方を向いた。
弦巻さんは優しく微笑みながらわたしを見ていて、「美桜さんが一歩でも前に進めるお手伝いが出来て良かった。」と言ってくれた。
「これからは、休職して薬を飲みながら何とか頑張っていきます。」
わたしがそう言うと、弦巻さんは「あ、そのことなんですが、、、」と言った。
「このまま、、、一緒にうちで暮らしませんか?」
「えっ?」
「線維筋痛症の方の一人暮らしはかなり大変です。誰かのサポートが必要だと思います。だから、そのサポートを、、、俺にさせていただけませんか?あ!もちろん、実験体とか、そんなこと思ってませんからね!」
慌てるようにそう言う弦巻さんに、わたしは笑いながら「わかってます。」と答えた。
「でも、、、わたしが居たら、ご迷惑じゃないですか?」
「いえ、全然迷惑なんかじゃないですよ。何なら、、、居てくれた方が嬉しいくらいです。」
そう言って照れ笑いを浮かべる弦巻さん。
わたしはその言葉が嬉しくて、わたしまで照れ笑いを浮かべてしまった。



