Grey Amber


「うんうん、肩ガチガチだね。ここは押したら、どうだい?痛いかい?」
「はい、痛いです。」
「じゃあ、ここは?」
「そこも痛いです。」

道重先生は、身体のいくつかの箇所を親指で押し、わたしに痛みがあるかどうかを確認した。

そして、最後に膝を押し「痛いです。」と答えると、道重先生は「わかったよ、ありがとう。」と言い、ソファーに戻り座ると、何かをメモしていた。

「うん、片瀬さんは線維筋痛症だね。診断書を書くから、会社に提出してしばらく休職しなさい。」

わたしは道重先生にそう言われた途端、涙が溢れてきた。

それは悲しい涙ではない、嬉し涙だ。

やっと、やっと、、、診断してもらえた。

自分が"痛い"と言い続けてきたことが嘘じゃないと、証明してもらえたような気がして、嬉しかったのだ。

「ただね、片瀬さん。残念ながら、今の段階では線維筋痛症の根本的な治療法はなくて、対処療法になるんだよ。だから、よく線維筋痛症の人に処方する薬と湿布を出しておくから、まずはそれは試してみてくれるかい?」
「わかりました。」

すると、弦巻さんが「その為に俺が頑張って治療法を研究してるんです。一日でも早く、良い治療法を見つけられるように頑張ります!」と言ってくれた。

「ありがとうございます。でも、今のわたしには"線維筋痛症"と診断していただけただけで凄く嬉しいです。道重先生、弦巻さん、本当にありがとうございます。」

わたしが涙を拭い、そう言いながら頭を下げると、「あら、弦巻くん。良い実験体を見つけてきたのね。」という声が聞こえてきた。

ふと顔を上げ、声をした方を見ると、そう言ったのはポニーテールをしたさっき道重先生と話していた30代くらいの女性だった。