Grey Amber


「じゃあ、まず。片瀬さんの身体の状態を教えてくれるかな?初めに異変に気付いたのは、いつ頃か覚えているかい?」

そう言って、道重先生はペンを持ち、メモを取る準備をした。

「初めは、三年前くらいです。手が腫れ始めて、指の関節に痛みとこわばりがありました。酷い時は肩から指先まで、直接骨を金槌で叩かれているような痛みがあって、整形外科に受診しました。」
「うん、なるほど。じゃあ、整形外科ではレントゲンと血液検査でリウマチを調べた感じかな?」
「はい、そうです。でも、何も異常ないと言われて膠原病専門の病院に行くように言われました。」

道重先生はわたしの言葉に細かく何度か頷くと、メモを取りながら「大体はそう言われてしまうんだよね。」と言った。

「それから膠原病専門のクリニックを探して受診して、エコー検査と血液検査をしましたが、そこでも特に異常はないと言われてしまって、、、」
「そっかそっか。痛いのに"異常はない"と言われて、ツラかったね。」
「はい、、、。その後も何件か整形外科に行きましたが、言われることは同じで、、、そのうちに段々、背中が痛くなったり、鎖骨あたりが痛くて苦しくなったり、動悸や目眩で立っていられなくなったり、頭痛も酷い時はバットで殴られているくらいの痛みがあったりで、症状が増えていきました。」

わたしの話に頷きながらメモを取る道重先生。

「それで、数日前に脚の痛みで救急搬送されたけど、そこでも異常なしと言われた感じかな?」
「はい、、、」

わたしが俯き加減でそう返事すると、道重先生は「わかったよ。」と優しい口調で言い、それからソファーから立ち上がると「ちょっと触診させてもらっていいかな?」と言った。

「あ、はい。」
「座ったままでいいからね。ちょっと失礼するよ。」

そう言って、道重先生はわたしの後ろに回り、肩や背中を指で押し始めた。