Grey Amber


大学のような建物の入口から入り、玄関でスリッパに履き替え、階段を上っていく。

その階段がわたしには少しキツく、弦巻さんは「ゆっくりで大丈夫ですよ。」とわたしのペースに合わせて上がってくれた。

二階に着くと、長い廊下を歩き、弦巻さんはある扉の前で足を止めた。

「ここです。」

そう指差した扉の上には"研究室2"と書かれていた。

そして、弦巻さんは扉をノックしてからドアノブに手を掛け、「おはようございます。」と言いながら扉を開け中に入って行った。

「失礼します。」

わたしも恐る恐る、中を覗きながら足を一歩踏み入れる。

そこは、まさに"研究室"という雰囲気の空間で、年配の男性と30代前半くらいの女性が居た。

「おう、弦巻くん。おはよう。」
「おはようございます、道重先生。今日は突然のお願いですいません。」
「いやいや、いいんだよ。」

弦巻さんとそう話す、白髪混じりの髪の毛に眼鏡をかけた優しい雰囲気の男性。
この人が道重先生なんだ。

「あ、こちらの方が電話でお話した、片瀬美桜さんです。」

弦巻さんは道重先生にそう紹介をしてくれ、わたしは「初めまして、今日はよろしくお願いします。」と深く一礼をした。

「初めまして、医師の道重です。話は弦巻くんから聞いてるよ。とりあえず、問診から始めようか。」

そう言い、道重先生はソファーへと座るよう促してくれた。