そして、次の日。
いつも研究室に行く時はバスで行くという弦巻さんだが、この日はわたしの身体のことを考え、車を出してくれた。
いよいよ、線維筋痛症の専門の道重先生に診てもらえる。
わたしがその病気なのか、まだわからないが、少しでも希望の光が見えた気がした。
「わぁ、今日は天気もいいから海が綺麗に見えますねぇ。」
そう言いながら、海岸沿いの道を車で走る弦巻さん。
わたしも窓の外に広がる、いつも来る馴染みの海を眺め「本当、綺麗ですね。」と言った。
「そういえば、研究室は都心にあるんですか。」
「はい、まぁ、そうですね。」
「それなのに、何で都心から外れそうなあの場所に住んでるんですか?通勤大変じゃないですか?」
わたしがそう訊くと、弦巻さんは前を向き運転しながら「俺、どちらかというと都心から外れたあの辺の雰囲気が好きなんですよ。」と言った。
「本当はもっと外れの方に住みたいんですけどね。キラキラした中心部よりも、少し廃れた建物があったり昔ながらの雰囲気が残る場所の方が、俺には魅力的に見えるんです。」
「わたしもです。都心は人が多いし、キラキラした人たちばかりで、わたしには眩しすぎます。」
わたしがそう言うと、弦巻さんは「俺たち、似た者同士かもしれませんね。」と言い、わたしは「そうですね。」と答えたのだった。
それから車を40分程走らせると、やっと都心に入り、研究室に辿り着いた。
「ここですよ。」
そう言って弦巻さんは車を降り、わたしも続いて車から降りる。
緊張してきたぁ、、、
でも、ワクワクするような気持ちもある。
わたしは「行きましょうか。」と言う弦巻さんについて研究室への入口へと向かった。



