「、、、あんまり。」
「そうですよね。一応、ポトフは作ったんですが、少しも無理そうですか?」
「ポトフなら、少しなら食べれそうです。」
わたしがそう言うと、弦巻さんは優しい表情で「じゃあ、少しだけでも食べましょうか。無理そうなら残してもいいですからね。」と言い、食事の用意をしてくれた。
そしてわたしは、出来立てのポトフをフーフーしながら、少しずついただいた。
優しいコンソメの味。
わたしは心まで温まるような感覚になり、目を閉じ「美味しい。」と噛み締めた。
「本当ですか?良かった。」
そう言って微笑む弦巻さん。
わたしは、こんなに優しい料理を食べたのは初めてかもしれない。
普段は仕事で疲れて自分でご飯を作る体力も気力もなく、コンビニのオニギリを一つ食べるくらいで済ませてしまう。
何なら、食欲もなくまともに食べ物を口にしない日もあったりする。
"食べる"ということに関心がなくなっていた為、食べ物を"美味しい"と感じたのは、いつぶりか覚えていないくらい久しぶりだった。
「あ、そういえば、美桜さんがお休みになられている間に道重先生に訊いてみましたよ。」
「え、本当ですか?」
「はい。丁度明日研究室に行くつもりだっただぁ、と言っていたので、明日診てもらえることになりました。美桜さんは、明日でも大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ、明日一緒に研究室に行きましょう。」
わたしは「はい!ありがとうございます。」と言うと、急に食欲がわいてきたような気がした。
やっと、やっと病名がつき診断してもらえるかもしれない。
わたしは明日が待ち遠しくて仕方がなかった。



