Grey Amber


「大丈夫です。いつものことなんで。」

わたしがそう言うと、弦巻さんは「いつものことだったとしても、痛みが毎日あるのはツラいですよね。もしかして、夜中あまり眠れなかったんじゃないですか?」と言うと、わたしに手を貸してくれながらソファーに座らせてくれた。

毎日痛みがあるのがツラい。
痛みで眠れない。

弦巻さんは、さすが病気について研究をしているだけあって、わたしの状態をよく把握し理解してくれていて、わたしはそれが嬉しかった。

「何か飲みますか?」

弦巻さんがそう訊いてくれ、わたしは「じゃあ、ココアで。」と答えた。

すると、弦巻さんは優しく微笑み「ココアですね、わかりました。」と言い、キッチンへと向かった。

「そういえば、何時までに職場には連絡すればいいですか?」
「えっ、8時半からなのでそれくらいには。でも、自分で連絡しますから。」
「いえ、俺が身内のフリして連絡しますよ。その方が美桜さんの状態がどれだけ良くないのか分かってもらえると思うので。」

弦巻さんはそう言うと、優しい口調で「俺に任せてください。」と言ったのだった。

「ありがとうございます。」

弦巻さんは本当に優しい人だ。

わたしは弦巻さんと触れ合っていると、心が温かくなる。

わたしの心は、今までどれだけ冷え切っていたんだろうか。

「はい、ココアですよ〜。」
「ありがとうございます。」

そうやって受け取った弦巻さんが入れてくれたホットココアを受け取る。

ココアなんて今までそんなに飲んだことはなかったけど、弦巻さんが入れてくれるココアは好きだ。

身体も心もこの甘さと温かさで解れていく気がするから。