Grey Amber


それから「そろそろ寝ましょうか。」という時間になり、弦巻さんは自分の寝室にあるベッドをわたしに譲ってくれると言った。

「でも、弦巻さんは?どこで寝るんですか?」
「俺はリビングに敷布団を敷いて寝ますよ。」
「それなら、わたしが敷布団で大丈夫です!」

わたしはそう言ったのだが、弦巻さんは「美桜さんは、身体のことを考えたらベッドで寝た方がいいです。低反発のマットレスを使ってるので寝やすいと思いますし、寝て起きる動作は、敷布団よりベッドの方が確実に負担が少ないですからね。」と言った。

そこまで考えて、ベッドを譲ってくれると言ってくれたんだ、、、

わたしは、こんなに優しい人に初めて出会った。

「じゃあ、、、お言葉に甘えて。」
「はい、甘えちゃってください。それに、俺は研究室に泊まり込みしてた時期、毎日ソファーで寝てたくらいですから!全然ソファーでもいいくらいなんですよ!」

そう言って、ハハッと笑う弦巻さん。

わたしは何だが不思議な気持ちになっていた。

弦巻さんとは今日初めて知り合ったばかりなのに、そんな気がしなくて、こんなに優しくわたしに寄り添ってくれて、甘え下手なわたしがお言葉に甘えられている。

弦巻さんは、人を癒し安心させる、歩くマイナスイオンのような存在に感じた。

「それじゃあ、おやすみなさい。」
「おやすみなさい、ゆっくり休んでくださいね。」

そう言って、わたしは弦巻さんの寝室に入り、セミダブルであろうサイズのベッドに腰を掛けてみた。

「わぁ、、、」

ついそういってしまうほどの心地良さ。

わたしは普段、パイプベッドにただの敷布団を敷いて寝ているだけだったので、低反発のマットレスは初体験だった。

低反発マットレスって凄いなぁ。

そう思いながら布団に入ると、当たり前だがいつも自分が寝ている布団とは違う爽やかな香りがした。

初めての布団なのに緊張も何もなく、ただ安心感しかない。

わたしは疲れもあったせいか、目を閉じ、すぐに眠りにつくことが出来たのだった。