私は、盗人です。
世の中では花を盗るものは罰せられないと聞きましたが、私が盗ったものは花ではありませんでした。
金を盗るものも、他人の命を盗るものもお縄になるのが常だとは申しますが、私が盗ったものはもっと別のものでした。
サファイアです。
私が何故今日まで見咎められる事もなく、また、お縄になる事もないのかと申しますと、私はその青い宝石を母の箪笥で見初めたからに他ならないのでございました。
サファイアと言うのは和名を『青石』と申しまして、
ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ、その名の通り空の青、海の青を併せ持つ純粋な青色の石でございます。
私は郵便局からの荷物を受け取るのに判子を探していて、そのサファイアを母の箪笥の一番上の引き出しから見つけたのでした。
「綺麗だ」
私はまだおさなく、また、宝石を見るのも初めてでした。
そのサファイアは銀のネックレスの先にぽつりとささやかに付けられたもので、今思えば高級なものではありませんでしたが、判子が千代紙を貼っただけの小さな木箱に入っていたのに対して紫色のベルヴェットを貼った宝石箱に収められていたのですから、その物々しさは一種異様で、それでおさない私の好奇心をとくと刺激したのでした。
だから、
私はこっそりとその宝石を、小さな手に入れました。
世の中では花を盗るものは罰せられないと聞きましたが、私が盗ったものは花ではありませんでした。
金を盗るものも、他人の命を盗るものもお縄になるのが常だとは申しますが、私が盗ったものはもっと別のものでした。
サファイアです。
私が何故今日まで見咎められる事もなく、また、お縄になる事もないのかと申しますと、私はその青い宝石を母の箪笥で見初めたからに他ならないのでございました。
サファイアと言うのは和名を『青石』と申しまして、
ダイヤモンドに次ぐ硬度を持つ、その名の通り空の青、海の青を併せ持つ純粋な青色の石でございます。
私は郵便局からの荷物を受け取るのに判子を探していて、そのサファイアを母の箪笥の一番上の引き出しから見つけたのでした。
「綺麗だ」
私はまだおさなく、また、宝石を見るのも初めてでした。
そのサファイアは銀のネックレスの先にぽつりとささやかに付けられたもので、今思えば高級なものではありませんでしたが、判子が千代紙を貼っただけの小さな木箱に入っていたのに対して紫色のベルヴェットを貼った宝石箱に収められていたのですから、その物々しさは一種異様で、それでおさない私の好奇心をとくと刺激したのでした。
だから、
私はこっそりとその宝石を、小さな手に入れました。



