その水槽の中に浮かんでいたのは波打つ黒く長い髪と透き通るような白い肌、伏せられたふっくらしたまぶたにと長く黒いまつ毛、すっと通った鼻筋。うすい桜色の唇を持つ少女。
美しい。
「人間じゃないですか!!」
僕はあわててその水槽に飛びついて、そして、
その少女が一糸纏わぬ姿だと気づいて飛びのいた。

「彼女は普通の人間じゃない」
さっき僕を怒鳴りつけた長身の先輩が淡々とそう言う。
「えっ?」
僕がきょとんとする。きょとんとするしかない。
「彼女の名前は被検体000-0001。『SUIREN』(スイレン)」
「スイレン?」

「湖で見つかった湖底人だ」