- 憶えていて……
確かに、彼女はここに居た。
寝不足が続いている。
僕が目覚めたのは、研究所(ラボ)の仮眠室の狭いベッドの下の白い床だった。
格子の填まった小さな四角の窓ひとつしかない。二列並んだ白い二段ベッドの下の階から落ちた僕は、最初、何が起こったのかわからず、しばしぼう然と白い天井を見上げた。
白い格子の隙間から夏の光の粒が薄い金色として忍び込み、僕は、
とても長い夢を見ていたのだと気づいた。
「ふわぁ……」
「寝癖、派手についてるぞ」
「あ」
もう、何日このラボに泊まり込んでいるのか。
僕はランドリーサービスに出しておいた糊でパリパリになっている白衣を着て、ラボの廊下をうんざりした気持ちで歩いていた。
ここは、湖沼の生き物や植物を研究するラボ。近くに日本で4番目に大きな湖がある。
「今日、何日でしたっけ?」
僕は寝ぐせでぐしゃぐしゃの頭をがしがし掻きながらバーコード頭の先輩に聞く。
「おいおい、大丈夫か。今日は11日だ」
「あー」
慌てて僕は白衣から、手帳を取り出そうとして、
「あ」
「どうした?」
「そう言えばこれ、洗濯に出したばっかりの白衣だった」
「それが?」
「手帳、控室! いや、仮眠室!?」
「しっかりしろよ、若者よー」
「あわわわわ」
僕は、あわてて仮眠室にとってかえした。
「何やってるんだ!」
「す、済みませんっ!!」
第一研究室にあわてて入って行った僕を、長身で20代後半の先輩がつばを飛ばして怒鳴りつける。
「消毒!」
「すっ、すっ、済みません!」
僕は慌てて入り口にあるポンプ式のアルコール消毒液を手に取って擦り込んだ。
ここは、このラボの中でいちばん大きな研究室だった。
「新しい被検体だ」
研究室はかなり照明を絞ってあった。窓のない真っ白な壁が、薄く青い照明により海のように幻想的に染まる。
数人の研究者達が集まるその前には、大きな水槽。円柱型のその水槽の上部はホースで天井のダクトに繋がっていて、水槽の中にコポコポと酸素を送り込んでいる。
「!?」
僕は、その水槽の中を見て思わず目を剥いた。
「女の子!?」
確かに、彼女はここに居た。
寝不足が続いている。
僕が目覚めたのは、研究所(ラボ)の仮眠室の狭いベッドの下の白い床だった。
格子の填まった小さな四角の窓ひとつしかない。二列並んだ白い二段ベッドの下の階から落ちた僕は、最初、何が起こったのかわからず、しばしぼう然と白い天井を見上げた。
白い格子の隙間から夏の光の粒が薄い金色として忍び込み、僕は、
とても長い夢を見ていたのだと気づいた。
「ふわぁ……」
「寝癖、派手についてるぞ」
「あ」
もう、何日このラボに泊まり込んでいるのか。
僕はランドリーサービスに出しておいた糊でパリパリになっている白衣を着て、ラボの廊下をうんざりした気持ちで歩いていた。
ここは、湖沼の生き物や植物を研究するラボ。近くに日本で4番目に大きな湖がある。
「今日、何日でしたっけ?」
僕は寝ぐせでぐしゃぐしゃの頭をがしがし掻きながらバーコード頭の先輩に聞く。
「おいおい、大丈夫か。今日は11日だ」
「あー」
慌てて僕は白衣から、手帳を取り出そうとして、
「あ」
「どうした?」
「そう言えばこれ、洗濯に出したばっかりの白衣だった」
「それが?」
「手帳、控室! いや、仮眠室!?」
「しっかりしろよ、若者よー」
「あわわわわ」
僕は、あわてて仮眠室にとってかえした。
「何やってるんだ!」
「す、済みませんっ!!」
第一研究室にあわてて入って行った僕を、長身で20代後半の先輩がつばを飛ばして怒鳴りつける。
「消毒!」
「すっ、すっ、済みません!」
僕は慌てて入り口にあるポンプ式のアルコール消毒液を手に取って擦り込んだ。
ここは、このラボの中でいちばん大きな研究室だった。
「新しい被検体だ」
研究室はかなり照明を絞ってあった。窓のない真っ白な壁が、薄く青い照明により海のように幻想的に染まる。
数人の研究者達が集まるその前には、大きな水槽。円柱型のその水槽の上部はホースで天井のダクトに繋がっていて、水槽の中にコポコポと酸素を送り込んでいる。
「!?」
僕は、その水槽の中を見て思わず目を剥いた。
「女の子!?」



