氷壁エリートの夜の顔

 私は頷きながら聞いて、最後に聞いた。

「……つまり?」

「出張には、僕も同行します」

 その一言に、息が止まりそうになる。
 いや……これは仕事。私情を挟んではいけない。

 そう自分に言い聞かせながら、できる限り表情を消す。
 こんなとき、自分にも氷の壁が張れたらいいのに──そう思いながら。

「わかりました。新幹線のチケットと宿泊先は、白石さんに手配をお願いしておきます。現地のアジェンダと調査項目は、後ほどメールで共有しますね」

 彼は無言でうなずくと、静かに背を向けた。
 ドアが閉まる音だけが耳に残った。