氷壁エリートの夜の顔

 まだぼんやした頭で、布団とローテーブルしかない簡素な部屋を見渡す。今日は日曜。まずは外来を受け付けている病院を探して、それから古美多に連絡しよう。

 昨日、京花さんが「商店街でフェアがあるから、たぶん今日と明日はヒマよ」と言っていたのを思い出しした。

「ダウンするタイミングだけは、悪くなかったかも」

 自分に言い聞かせるように、そうつぶやく。

 スマホで病院を検索する。診療開始まで少し間があったので、もう一度布団にもぐり込んだ。

 次に目を覚ましたのは、もうお昼前。私は慌てて古美多に電話をかけた。

* * *

 診断は「風邪と疲労」。インフルエンザなどの感染症ではなかったことに、少しだけ安堵する。
 とはいえ、熱はじわじわと上がっているのがわかる。

 病院からアパートまでは、歩いて40分くらい。バスも通っていない。
 病院の前にはタクシーが待機していたが、体がしんどい時でも、慣れていない贅沢には手が伸びないものだ。
 ゆっくり帰ればいいやと、私は歩き出した。