氷壁エリートの夜の顔

 そういって、祐介くんはさっきの包みに添えてあった花柄のカードを指先で挟んだ。
 そこには、祐介くんのお姉さんに宛てて『いつも試作に付き合わせてしまってすみません。またご感想いただければ嬉しいです』と、書いてある。

「にしてもさ、咲さん」

「なに?」

「このコーヒー柿ようかん、結城さんのためのレシピだろ」

 私は思わず真っ赤になりながらも、小声で言い返す。

「なに言ってるの、そんなわけないじゃない!」

「だってこの間、颯真さん言ってたじゃん。これ、コーヒーを入れても美味しいんじゃないかって。咲さんがそれ聞いてたの、俺、知ってるよ」

 何も言い返せずに、赤くなったまま目を逸らした。祐介くんは飄々としているようで、たまにとても鋭い。

「……いろんな味、試してみたいだけ」

「うんうん、わかるよ、そうだよね」

 祐介くんはニコニコと頷いたあと、少し声をひそめていたずらっぽく言った。

「安心してよ、コーヒー味だってことは秘密にしておいたから。颯真くん、喜んでくれるといいね」