* * *
決定的だったのは、翌週の土曜だった。
東條氏のインタビューが掲載された雑誌を買って帰る途中、足元にグレープフルーツが転がってきた。反射的に拾い上げて顔を上げると、桜さんが目を丸くして立ち止まっていた。
──そうか、古美多で働いているということは、彼女もこのあたりに住んでいるのか。
そんな考えがよぎったそのとき、桜さんの背後から、高校生くらいの男女がひょこっと顔を出した。
前日、彼女は「お泊まり会があるから古美多のバイトは休む」と言っていた。
てっきり、遠距離の恋人が来るのかと思っていたが──どうやら、違ったようだ。
理由もなく、気持ちが少し軽くなる。その感覚に、自分でも少し戸惑った。
「妹の柚月と弟の律希です。今日、泊まりに来ていて」
「……お泊まりって、ご家族だったんですね」
口から出た言葉が、思っていたよりも間の抜けた響きだったのが、自分でもわかった。
すると双子が、食いつくように声を上げる。
「お姉ちゃん、結城さんも一緒に、ほうとう、どうかな? ねぇ、りっくん」
「そうだよ、結城さん! 姉ちゃんのほうとうは本場越えだから、絶対食べてって!」
決定的だったのは、翌週の土曜だった。
東條氏のインタビューが掲載された雑誌を買って帰る途中、足元にグレープフルーツが転がってきた。反射的に拾い上げて顔を上げると、桜さんが目を丸くして立ち止まっていた。
──そうか、古美多で働いているということは、彼女もこのあたりに住んでいるのか。
そんな考えがよぎったそのとき、桜さんの背後から、高校生くらいの男女がひょこっと顔を出した。
前日、彼女は「お泊まり会があるから古美多のバイトは休む」と言っていた。
てっきり、遠距離の恋人が来るのかと思っていたが──どうやら、違ったようだ。
理由もなく、気持ちが少し軽くなる。その感覚に、自分でも少し戸惑った。
「妹の柚月と弟の律希です。今日、泊まりに来ていて」
「……お泊まりって、ご家族だったんですね」
口から出た言葉が、思っていたよりも間の抜けた響きだったのが、自分でもわかった。
すると双子が、食いつくように声を上げる。
「お姉ちゃん、結城さんも一緒に、ほうとう、どうかな? ねぇ、りっくん」
「そうだよ、結城さん! 姉ちゃんのほうとうは本場越えだから、絶対食べてって!」
