笑顔は形式的でも、視線はまっすぐだった。そして確かに、目を引く美人だった。だが俺は、軽く会釈を返すにとどめる。
その目を真正面から受け止めるのが、なぜか少しだけ落ち着かなかった。
──彼女のペースに、巻き込まれないようにしなければ。
最初は、そう思っていた。だが、仕事を重ねるうちに、それが杞憂だったとわかる。
桜咲は、想像以上に信頼できるパートナーだった。
最初こそ、軽い雑談を挟んでくることもあったが、やがて必要なやりとりだけに絞り、無駄なく進めるようになった。その切り替えの早さも含めて、むしろ仕事がしやすいと感じるほどだった。
ラウンジで彼女を見かけたのは、そんな折だった。
普段は社員がいる時間帯を避けていたが、そのときはテレビで東條忠宏のインタビューが流れていて、思わず足を止めてしまった。
人格者として知られるビジネスパーソンで、俺が尊敬している数少ない人物のひとりだ。
インタビューが終わり、カップを片づけようとしたその時──聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「……恋って、たぶん贅沢なものなんだと思う。時間も、お金も、心の余裕も必要で」
その目を真正面から受け止めるのが、なぜか少しだけ落ち着かなかった。
──彼女のペースに、巻き込まれないようにしなければ。
最初は、そう思っていた。だが、仕事を重ねるうちに、それが杞憂だったとわかる。
桜咲は、想像以上に信頼できるパートナーだった。
最初こそ、軽い雑談を挟んでくることもあったが、やがて必要なやりとりだけに絞り、無駄なく進めるようになった。その切り替えの早さも含めて、むしろ仕事がしやすいと感じるほどだった。
ラウンジで彼女を見かけたのは、そんな折だった。
普段は社員がいる時間帯を避けていたが、そのときはテレビで東條忠宏のインタビューが流れていて、思わず足を止めてしまった。
人格者として知られるビジネスパーソンで、俺が尊敬している数少ない人物のひとりだ。
インタビューが終わり、カップを片づけようとしたその時──聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「……恋って、たぶん贅沢なものなんだと思う。時間も、お金も、心の余裕も必要で」
