「いいよな、ゆづちゃんはいろんなところに行けて。それ聞いて、俺も食べたくなったんだよ。姉ちゃんなら作れるかと思って」

 その言葉に、胸がちくりと痛んだ。

 柚月は陸上部に所属していて、なかなかいい成績を残している。大会や合宿で県外へ出ることも増えてきた。
 このままいけばスポーツ推薦も狙えると、コーチにも言われている。本人もそれに賭けていて、将来は実業団入りを目指している。

 一方の律希は、真逆のタイプ。
 勉強のコツを自然と身につけていて、塾にも通わずに成績はトップクラス。返済不要の給付型奨学金を目指し、将来は研究者か、大学で教鞭を執りたいと話している。

 タイプは違うけれど、どちらも穏やかで、思いやりがあって、人の話をちゃんと聞ける、本当にいい子たちだと思っている。

「それじゃ、ちょっとスーパー寄ってからうちに行こっか。買い忘れたものがあって」

「何買い忘れたの?」

「……かぼちゃ」

 柚月と律希が顔を見合わせて、同時に吹き出した。

「主役じゃん!」
「かぼちゃがないと始まらないじゃん!」
「姉ちゃん、相変わらず抜けてるなぁ」