「まあ、あんたのそういうところ、嫌いじゃないよ。でもね、26歳ってさ、世間では一番輝く時期とか言われる年齢でしょ? それなのに恋もせず、仕事と『夜の部』で一日が終わるって……ちょっと寂しくない?」

 私はグラノーラバーの包みを破き、ひと口かじった。ココナッツとアーモンドの優しい甘さが、嘘でちょっと減っていた心のゲージを回復させてくれる気がした。

「寂しくは、ないかな。お金も時間も、ほかに使わなきゃいけないことがあるし。それに、彼氏がいたことないから……正直、どういうものなのか、いまいちピンとこないんだよね」

 美玲が黙り込んだ。見ると、彼女は表情をゆるめて、少しだけ切なげな目で私を見ている。
 だから私は、努めて明るく笑った。

「それに、彼氏がいなくても、私には美玲がいてくれるしね」

「……なにそれ、口説いてる?」

 美玲は照れ隠しのように、私の肩をグーで小突いた。