たちまち耳まで赤くなる私を見て、柚月と律希がからかうようにナレーションを始めた。

「彼の名は、結城颯真──謎多きイケメン」
「家族公認まで、あとワンミッション」

「あんたたちも、やめなさいってば!」

 その言葉に、玄関に笑いが広がった。

 お母さんがふと笑顔のまま視線を伏せ、それからまっすぐに颯真さんを見た。

「……咲にはね、小さいころから、ずっと我慢ばかりさせてきたの。家のことも、弟と妹のことも、いつも『大丈夫』って笑って背負ってくれて……」

 そう言って、私の肩にそっと手を置く。

「だから、咲がいつも、作り笑いじゃない、本当の笑顔でいられるように──どうかよろしくお願いします」

 私は慌てて声を上げる。

「ちょっと、お母さん、私たちはまだそんなんじゃ──」

 けれど、颯真さんは頷いて、お母さんの目を見てまっすぐに言った。

「はい。咲さんは、僕が必ず守ります」

 その言葉に、思わず胸が熱くなる。
 お母さんは満足そうに微笑んで、明るい口調に戻ってつぶやいた。

「……ほんと、キアヌに似てる上に、セリフまで映画みたいねぇ」

「お母さん!」

 再び、あたたかい笑い声が玄関いっぱいに広がった。