「颯真さん!」

 玄関を開けるなり、柚月と律希が駆け寄ってきた。

「颯真さんが来てくれた!」
「車、かっこいいね!」

 ふたりは颯真さんの車のまわりを、まるで展示会に来たみたいにぐるぐると見て回る。
 颯真さんは少し照れたように笑いながら、こたつを入れるために後部ドアを開けた。

「ありがとう。でも、今日の主役はこたつだから。俺はただの運び屋です」

「いやいや、彼氏兼運び屋って最強でしょ」と律希が言い、「しかもイケメン」と柚月が茶化すように笑う。

 その後ろから、お母さんが顔をのぞかせた。

「まあ、初めまして。柚月と律希から聞いてたけど、本当にハンサムねぇ。若いころのキアヌ・リーブスを思い出すわぁ」

 エプロン姿のまま微笑むお母さんは、いつも通り明るくて、いつもよりちょっと嬉しそうだった。

「咲が男の人を家に連れてくるなんて初めてだから、お母さん、ちょっと感動しちゃったわ。情熱大陸のテーマソングでも流したいくらい」

「お母さんっ!」

 慌てて声を上げると、颯真さんが笑いをこらえながら言った。

「光栄です。初出演が僕でよかった」