そのとき、よく通る声がラウンジに響いた。
「え、結城さん、お弁当……?」
杏奈ちゃんだった。あっという間に、周囲の空気がざわつく。
「え、まさか……手作りですか?」
「ええ。彼女が作ってくれたんです」
颯真さんは、ごく自然に答えた。
その一言で、ラウンジが一瞬静まり返り……次の瞬間には、歓声とざわめきで包まれた。
ラウンジを出ようとしていた八木さんが、足を止めて彼に近づいた。
「結城、美味そうな煮物だな。君は知らないかもしれないが、俺は煮物マスターを目指してるんだ。ひと口、くれ」
「そんなこと知らないし、あげません。全部俺のです」
「そう言わないでさぁ……あれ、これ何の具材だ? 桜さん!」
突然の指名に、視線が一斉に私へと向く。
「ねえ、結城の煮物に入ってる四角いの、何?」
「……高野豆腐です」
耳まで赤くなりながら答えると、八木さんはさらに楽しそうに笑った。
「へぇ、美味しそうだなあ」
そう言いながら、美玲のフードパックの蓋に盛られた煮物を見つけて、いたずらっぽく付け加える。
「 ──あれ? 高橋さんにはあげるんだ?」
「え、結城さん、お弁当……?」
杏奈ちゃんだった。あっという間に、周囲の空気がざわつく。
「え、まさか……手作りですか?」
「ええ。彼女が作ってくれたんです」
颯真さんは、ごく自然に答えた。
その一言で、ラウンジが一瞬静まり返り……次の瞬間には、歓声とざわめきで包まれた。
ラウンジを出ようとしていた八木さんが、足を止めて彼に近づいた。
「結城、美味そうな煮物だな。君は知らないかもしれないが、俺は煮物マスターを目指してるんだ。ひと口、くれ」
「そんなこと知らないし、あげません。全部俺のです」
「そう言わないでさぁ……あれ、これ何の具材だ? 桜さん!」
突然の指名に、視線が一斉に私へと向く。
「ねえ、結城の煮物に入ってる四角いの、何?」
「……高野豆腐です」
耳まで赤くなりながら答えると、八木さんはさらに楽しそうに笑った。
「へぇ、美味しそうだなあ」
そう言いながら、美玲のフードパックの蓋に盛られた煮物を見つけて、いたずらっぽく付け加える。
「 ──あれ? 高橋さんにはあげるんだ?」
