「結城さん、私からポップコーンを奪ったんだから、正直に話してください」

 ……奪った?
 どう見ても、差し出されたのだが。しかも、たった2粒。

「──なんですか?」

 俺は尋ねた。桜さんのことを聞いてくるのだろうと、なんとなく予想していた。

「どうして咲を振ったんですか?」

 ……やっぱり、と思うのと同時に、違和感が引っかかる。

 振った? 俺が?

「振られたのは、僕の方ですが」

 今度は、高橋さんが眉をひそめる番だった。

「──咲は、あなたからプライベートな連絡がなくなったって言ってた。しかもそのタイミングで、あなたと香坂さんが付き合っていることが公になって」

「ちょ、ちょっと待って」

 自分の知らない情報が次々出てきて、どこから正せばいいのかわからない。

「まず、振られたのは俺です。彼女は──その、俺の部屋に泊まった翌朝、メッセージだけを残して帰った。しかも翌日から、何もなかったみたいな顔で、まったく態度を崩さない。取りつく島もないくらいに」

「メッセージ? 咲は、メッセージを送ったら、連絡がなくなったって言ってたけど」