薄暗いロビーには、柚月と律希がいた。
 私の姿を見るなり、「お姉ちゃん」と言ってふたりが駆け寄ってくる。

「お母さんは?」

「今、点滴受けてる。……疲れと貧血、あと血糖値がちょっと低かったみたい。命にかかわることはないって」

 その言葉に安堵して、膝から力が抜けそうになる。でも、なんとか踏みとどまった。

「ただ、検査入院になるかもしれないって。詳しい話は、姉ちゃんに話すって言ってた」

 律希も不安そうに言う。このところ大人びてきた彼の顔が、今はひどく幼く見えた。

「うん。ありがとう。もう大丈夫だからね」

 私はふたりの肩を抱いて、そう言った。

 受付で、入院の手続きを済ませる。
 安堵と不安が交互に押し寄せてきて、ボールペンを握る手がずっと微かに震えていた。

「お母さまが落ち着かれたら、ご案内しますね。今日は、ご家族の方もゆっくりお休みください」

 深く頭を下げて、「ありがとうございます」と小さく答えた。