──けれど、その土曜の午後、絢音から、唐突にメッセージが届いた。
『今、颯真の家の近くにいるの。行ってもいい?』
好きでもない相手を部屋に上げるつもりはなかった。断りの返事を送ると、すぐに電話が鳴った。
「少しだけでいいから会って話したい」と、何度も繰り返す。
……用件は、おおよそ予想がついていた。
もし彼女がただの同僚なら断っていただろう。
でも、同じ大学出身で、共通の友人も多い。無視するには微妙にややこしい立場だった。
話の中身は、予想通りだった。
彼女の告白に、俺は静かに答えた。
「好きになった人以外、考えられない」
彼女は黙ったまま、視線を落とす。いつもの自信に満ちた表情は影を潜め、ほんの少しだけ、胸が痛んだ。
でも──俺にできることは、もうない。
「……ちょっと、これから用事があるから。ごめん」
そう告げて席を立つ。
このまま古美多へ向かったところで、待っているのは拒絶かもしれない。
それでも、何も言わずに終わらせるよりはいいと思った。
──だけど、店の前で開店を待っていたのは、八木さんだった。
なぜ彼がここに?
反射的に視線を逸らし、その場を離れる。
──彼女が、教えたのだろうか?
『今、颯真の家の近くにいるの。行ってもいい?』
好きでもない相手を部屋に上げるつもりはなかった。断りの返事を送ると、すぐに電話が鳴った。
「少しだけでいいから会って話したい」と、何度も繰り返す。
……用件は、おおよそ予想がついていた。
もし彼女がただの同僚なら断っていただろう。
でも、同じ大学出身で、共通の友人も多い。無視するには微妙にややこしい立場だった。
話の中身は、予想通りだった。
彼女の告白に、俺は静かに答えた。
「好きになった人以外、考えられない」
彼女は黙ったまま、視線を落とす。いつもの自信に満ちた表情は影を潜め、ほんの少しだけ、胸が痛んだ。
でも──俺にできることは、もうない。
「……ちょっと、これから用事があるから。ごめん」
そう告げて席を立つ。
このまま古美多へ向かったところで、待っているのは拒絶かもしれない。
それでも、何も言わずに終わらせるよりはいいと思った。
──だけど、店の前で開店を待っていたのは、八木さんだった。
なぜ彼がここに?
反射的に視線を逸らし、その場を離れる。
──彼女が、教えたのだろうか?
