* * *

 翌朝、彼女はいなかった。
 ブランケットはきちんとたたまれ、紅茶のカップもきれいに洗われて、元の場所に戻されている。
 痕跡は残っていないのに、彼女の気配だけが、そこに残っていた。

 数時間後、彼女からメッセージが届いた。

『昨日はご迷惑をおかけしました。
いろいろと本当にありがとうございました。
どうぞお体に気をつけてください。』

 礼儀正しく整えられた、隙のない文章。その完璧さが、かえって拒絶の意思を強調しているように思えた。

──「あれは間違いだった」という意味なのか。
 だとすれば、あのとき彼女の瞳に映っていた感情は……何だったのか。