氷壁エリートの夜の顔

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 その後の3日間も、結城さんは完璧な氷壁モードだった。

 諦めることには、慣れているつもりだった。

 仲のいい友達とおそろいで買うはずだったバッグ、誘われながらも断った夏休みのテーマパーク、旅費を工面できなかった大学の卒業旅行。
 だけど、「羨ましい」なんて思う暇がないくらい忙しくしていれば、感傷は、意外とあっさりとやり過ごせていた。

 だけど今回は、そう簡単にはいかなかった。

 どうしても諦めきれない自分がいることが、ほんの少し寂しくて、それでもどこか希望のようにも思えた。
──もしかしたら、まだ、チャンスがあるのかもしれないって。

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 そんな私の気持ちにトドメを刺したのは、土曜の古美多での出来事だった。
 思いがけない人物の口から、それはあっさりともたらされた。

「いい雰囲気の定食屋だと思ったら……桜さん。こんなところで会えるなんて、ちょっと運命感じるな」

 そう言いながら店に入ってきたのは、八木さんだった。