氷壁エリートの夜の顔

「ちょっと、真剣に悩んでるんだけど!」

 抗議する私に、彼女は笑い涙を拭いながら言う。

「そうか、咲は今まで、告白される側だったもんね。あのね、リアルの恋って、言葉なんてなくても始まったりするのよ。むしろ、気づいたら恋人だったって状態がデフォだから」

「……ほんとに?」

「ほんとほんと。だから安心して、その遅れてきた初恋を楽しみなって」

「でもさ……昨日、どうしたらいいのかわからなくて。恥ずかしかったのもあって、朝、ひとりで帰ってきちゃった」

 私は、テーブルの上で、両手を握った。

「もちろん、お礼のメッセージは送っておいたよ。くしゃみしていたから、体調を気遣う一言も入れて。でも、返事が来ないんだよね……」

 美玲は優しい笑顔で私を見た。

「それなら、次にちゃんと話せるタイミングで、正直に伝えればいいんだよ。それだけで充分。もしそこで引くような男だったら、咲には相応しくないってこと」

 自分のことのように喜びながら、力強く言ってくれる美玲に励まされて、私はやっと笑顔で「うん」と頷いた。