言ってから、なんだか貧乏アピールみたいになった気がして、思わず視線を落とした。
 普段なら気にしないけれど、この洗練された部屋で話すと、ちょっとだけ胸が痛む。

「……お金を貯めているのは、ふたりの進学のため?」

 ストレートな問いかけだった。でも、なぜか嫌な感じはまったくなかった。
 澄んだ月明かりが、空気ごとやわらげてくれているのかもしれない。

「私のこと、ヤングケアラーだと思ってる?」

 バルコニーの手すりに手をかけて、笑いながら聞いてみる。
 だけど彼は、すぐには答えず、ただ静かに私を見ていた。

「双子とは10歳離れてるし、不思議と、苦労した記憶はあまりないんだ。遊びに行けなかったり、部活をあきらめたりってことはあったけど、ふたりのことを世話するのは、楽しかったから。たぶん、ほかの選択肢があっても、私はこっちを選んでたと思う」

 そう言ったとき、結城さんの表情が柔らかくなった。

「君が、自分で選んだって迷いなく言えるのが、すごいなと思う」

「え?」