氷壁エリートの夜の顔

 その笑顔を見たとき、ようやくわかった。
 私も、祐介くんや京花さんと同じように、彼のその笑顔を──自分に向けてほしかったんだ。

「今日、張り切って作ったから、喜んでもらえると嬉しいよ」

 私たちは向かい合って、ゆっくりと食事を楽しんだ。
 最初はビールで、2杯目からはカヴァに。
 けれど、会話と料理が心地よすぎて、グラスの中身はなかなか減らなかった。



 食後は、私が持ってきたプリンを、結城さんが切り分けてくれた。
 紅茶も淹れて、湯気の立つカップと一緒にお皿を差し出してくれる。

 それから一口食べた彼は、驚いたようにプリンを二度見した。

「……うまっ!」

 スパイス柿ようかんを初めて食べたときの反応とそっくりで、私はつい笑ってしまう。
 結城さんも同じことを思い出したのか、少し照れたように笑った。

「ほんとに、美味しい。これ、店で出せるレベルだよ」

 静かに時間が流れていく。
 夜はすっかり更けて、窓の外にはいつの間にか、明るい月がのぼっていた。

 カップを手にしたまま、結城さんがバルコニーの方に目を向けて、口を開いた。

「……ちょっと、外に出てみる?」