氷壁エリートの夜の顔

「プリンだ」

「蒸しプリンです。持ち歩き時間を考えて、少し強めに火を入れたから、ちょっと硬いかもしれないけど」

 結城さんは、嬉しそうに微笑んだ。
 まるで古美多の常連さんに見せるような、あたたかくて柔らかい笑顔だ。

「ありがとう。プリン、好きなんだ」

 その言葉に、自然と私の口元もほころぶ。

「知ってます。この前、いろんな種類をいただいたから」

 結城さんが用意してくれたのは、スズキのソテーだった。

 レモンとハーブの香りをまとわせて、バターではなくオリーブオイルで軽く仕上げた上品な一皿。
 添えられていたのは、アボカドとトマトのサラダ。バルサミコと少しの蜂蜜を効かせたドレッシングが、爽やかさの中にコクを加えている。

 結城さんの料理のセンスは、本当にすごい。

「おしゃれですね……自己流のほうとうで、おもてなしした気になってた自分が、ちょっと恥ずかしいかも」

 そう言うと、彼はクラフトビールを静かに注ぎながら、ゆるやかに返す。

「ほうとう、美味しかったよ。柚月ちゃんと律希くんと話すのも、すごく楽しかった」